パワハラ指導はスポーツに必要か?~私が体験した恐怖の練習~

こんにちは、ハラスメント研修専門講師の倉本祐子です。

私は、8歳から17歳まで、競泳をしていました。

11歳から強化選手の仲間入りをして、インターハイ、国体に出場した経験があります。

その10年間の選手生活の中で、5人のコーチに教わりましたが、その中に一人だけ、生徒を殴ることは「指導に必要だ」と豪語している方がいました。

私は、一度だけではありますが、そのコーチの拳の指導を受けることになりました。

今日は、その時に感じた感情と実際にパワハラ指導で、水泳は上達したかどうかについて、書きたいと思います。

きっかけは、県大会優勝

強化選手になった11歳の県大会で、私は背泳の種目を泳ぐことになりました。

それまで、クロールを専門に泳いでいたのですが、練習で背泳のタイムが速くなってきたので、コーチが決めて大会にエントリーされていました。

その県大会で、初出場にも関わらず、背泳の200メートルでなんと優勝!

勝因は、私の出身地である和歌山県の競泳人口が少なかったこと、さらに背泳を専門種目で泳ぐ選手が少なかったことだと思います。

しかし、ここから私の選手生活は一変しました。

当時、私は設立して3年ほどのスイミングスクールに所属をしておりました。

速い選手が育つことは、きっとスクールの宣伝になるのでしょう。

県大会の優勝を機に、コーチの指導は熱を帯びるようになったのです。

当時のコーチは、「何やってんだ!」「もっともっと!全力で!」と厳しい言葉は言うものの、一切手を挙げることはありませんでした。

叱るときはしっかりと叱る、褒めるときはしっかりと褒める指導で、誰一人、贔屓をすることなく、一人ひとりと向き合ってくれた素晴らしいコーチでした。

ところが、コーチの上の理事長は違いました。

指導をする上で、時には殴ることも必要だと言い切る方でした。

俺が分からせてやる

県大会で優勝後、もっとタイムを伸ばすためにフォーム(泳ぎ方)を直す必要がありましたが、

いくら言葉で説明されても中々理解が出来ず、私のフォームは一向に改善されませんでした。

そんなある日、いつものコーチの代わりに、理事長が練習を見ることになり、

「今日は、お前のフォームを徹底的に直すからな」と練習開始前に言われ、反射的に怖くなりました。

怖さと緊張で硬くなった体は、錘のように重く、どんなに腕を動かしても、足を動かしても、いつものタイムで泳ぐことができませんでした。

「なんだ!遅いぞ!」「本気でやれ!!!」理事業は叫んでいました。

しかし、その声が怖くて、もっと身体が動かなくなっていきました。

その時です。

 

「ゴン!ゴン!ゴン!」

 

頭と額に強烈な痛みが走り・・・頭を抱えて上を見ると、理事長の拳がありました。

プールの端まで泳いだ私の頭に、理事長は拳で3回殴ったのでした!!!

「何回言ったら、わかるんだよ!フォームが違うって言ってるだろ!!」

「直せ、今すぐ!!!手は真っすぐだ!!!」

痛みと怖さで意味が分からなくなったことを今もはっきりと覚えています。

ゴーグル(水中眼鏡)の中が、みるみる涙で溢れました。

他の選手も、顔がひきつったまま、私を見ていましたが、誰も何も言いません。

なぜなら、何か言えば、次は自分が殴られるからです。

そこから、執拗に理事長は、私を殴り続けました。

25メートルのプールの、端と端で、理事長の手が届く位置に来ると、「出来ていない」と殴りました。

これで良くなるだろう

3時間の地獄のような練習が終わり、ロッカールームで泣き崩れた私を見て、仲間がとにかく背中をさすってくれました。

でも、誰も何も言いません。

頭を手で触ると、こぶでぼこぼこになっていました。

殴られすぎて、タオルで頭を拭くと痛みが走りました。

ようやく着替えて、帰ろうとしたとき、理事長が声をかけてきました。

「これで、(フォームは)良くなるから、大丈夫だ」

・・・・・・沈黙の後、

絞り出すように「ありがとうございました」と言って、その場を後にしました。

パワハラ指導で、フォームは変わったか

数日間、頭の痛みが消えないままでしたが、練習は休みませんでした。

殴られて辞めるのは、どうにもこうにも腑に落ちなかったからです。

では、フォームは変わったかというと、全く改善できませんでした。

殴られて、怒鳴られただけで、『方法』や『見本』を教えてくれなかったからです。

どうやればいいのか、どうすればもっと良いフォームになるのか、どのように手を使い、身体をつかい、足を使えば、良いフォームになるのか。

そんなことを何一つ、示さず「できていない!」と怒鳴られ、「できていない!」ことを理由に殴られただけなので、私は意味が分かりませんでした。

残ったものは、『恐怖』だけ。

その一件があってから、理事長の顔を見るたびに、緊張するようになりました。

練習に行く度に、理事長に会うため、『恐怖』が体中を支配して、思うように体が動かなくなり、タイムは遅くなる一方でした。

結局、その夏は、すべての大会で優勝はおろか、ベストタイムを出すことはできませんでした。

スポーツにパワハラ指導は必要か

結果として、私にはパワハラ指導とも言うべき、怒鳴る、殴るといった指導方法は全く効果がありませんでした。

残ったものは、「理事長の言うことをきかないと殴られる」という『恐怖』のみ。

『向上させるため』に、『成績を上げるため』に、力に頼った暴力行為や何も言えない生徒に向かって、ただ怒鳴る、殴るなどは意味がないと思うのです。

『恐怖』で人を支配しても、一人ひとりの力を導くことはできません。

とはいえ、スポーツにおいて、時に厳しく指導することを必要とする場合もあると思います。

『ルールを破る』『反則をする』などのスポーツとしてやってはいけないことは、相手の年齢に合わせて、「なぜダメか」を分かるように教えるべきです。

これは仕事も全く同じだと思っています。

失敗した部下に対して、「なんで、できないんだ!」と責めるのではなく、

・どうすればできるようになるのか
・どうやれば間違わずにできるのか

を相手に分かるように伝えることが必要だと思います。

余談ですが、その後、理事長はどうしたかというと、指導の現場から一切手をひくことになりました。

大人の事情でどうなったか、当時の私には全くわかりませんが、私の一件があって親から多くの抗議があったようです。

時代は変わって

その後、インターハイと国体に出場した後、すっかりタイムが伸びなくなり、高校二年で強化選手は辞めました。

しかし、40を過ぎたころから、もう一度、全国大会を目指したいなとぼんやりと考えるようになり、たまたま、娘が「スイミングを習いたい」という言葉をきっかけに、昨年からスイミングスクールに通い始めています。

そこで、33年前と全く違う練習方法や泳法を教えてもらって、進化に驚いてばかりいます。

今教えてもらっている、コーチ曰く、

「昔は、必死で泳ぐのが当たり前でしたが、今は、いかに、楽に速く泳ぐかなんです」

効率よく体を動かし、楽に速く泳ぐ。

必死で泳ぐしか知らなかった私からすると、衝撃の一言でした。

時代は、どんどん変わっていきます。

今年になって、半世紀になった私ですが、競泳も仕事も古いやり方に拘らず、変わって進化しようと思っています。

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