【これって、セクハラ?】取引先の接待に女性社員を同席させることについて
こんにちは、ハラスメント研修 専門講師の山藤祐子です。
ここ最近(2018年9月)は、パワハラよりもセクハラを中心に研修してくださいというご依頼が増えました。
あからさまなセクハラは、職場で減ってきている印象があったのですが、まだまだ根が深いようです。
そこで、今日は取引先の接待に女性社員を同席させることがセクハラに該当するかについて、書こうと思います。
と言うのも、ハラスメント防止研修に参加されている受講者の話を聞いていると、
やってはいけないと分かりながらも、ついつい、やっちゃっている、という声がちらほらあるからです。
では、順を追って説明していきます。
なぜ、女性社員を接待に同席させるのか?
まず、なぜ女性社員を同席させる必要があるのかを考えたいと思います。
研修の受講者の方々から、多く聞くのは、
「場が和むから」という声です。
そこで、私から受講者に対して、突っ込んで質問をしてみることにしています。
倉本「どうして、女性社員がお酌すると和むんですか?」
受講者Aさん「いや、ほら、やっぱり女性がお酌するほうが男性としては嬉しいよね?」
倉本「では、女性がお酌をする方が、男性として嬉しいのは、どうしてですか?」
受講者Aさん「やっぱりさ、ごつい男よりはいいんじゃないのかな~」
倉本「では、女性がする方がいいのであれば、なぜ社員にさせるのですか?」
受講者Aさん「それは・・・」と口ごもります。
実は、こうやって質問をすると返答に困る方が殆どです。
先に書きますが、女性が気を利かせてお酌をすることをダメだと言っているのではありません。
私が問題だと感じていることは、上に書いたように、
女性社員がお酌をすることを、
「和むから普通のこと」
「昔からやっていること」と、
理由や目的などを考えずに、女性社員だからと強要することは、セクハラと言われても言い訳のしようがないからです。
なぜ、セクハラと言われてしまうのか
まず第一に、お酌を強要している女性は、「社員」であるからです。
第二に、取引先と接待している場所が、たとえオフィスから遠く離れた料理店であっても、
その場所を「職場」としてみなします。
職場はオフィスだけをさすのではなく、職場の関係性をもって外に出れば、その場所が職場となるわけです。
まして、仕事上に必要な『接待』の場面は、まさに職場といえるでしょう。
男女雇用機会均等法では、「性役割の押し付け」についても触れています。
「性役割の押し付け」とは、「女らしさ・男らしさ」をことさら強調することです。
具体的には、
「女性だからお酌をしなさい」「お茶入れるのは女性の仕事である」や
「男性だから力が強いはず」「男性なら、お酒を飲めるもんだ」
というように性別で役割を決めつけて、押し付けてはいけないのです。
では、その性役割を押し付けれた女性社員はどういう気持ちになるでしょう。
私の体験から、お伝えしたいと思います。
接待の時はスカートを履くもの?
会社員時代に、上司が担当している取引先の接待を依頼されたことがありました。
その日、座敷で接待ということもありパンツスーツを着ていくと、
「分かっていないね。こういう場合は、スカートだよ」といきなり上司にため息をつきながら言われる始末。
この時点で、嫌な予感はしていたのですが、予感は的中。
そのあとの食事の場面では、なぜか取引先の男性二人の間に座ることになり、
取引先の男性二人にビールをつぎ、食事をとりわけることに。
さすがにタバコの火まで点けませんでしたが、上司の要望を汲み取り、にこにこ笑顔で取引先の話を聞きました。
そうやって2時間ほどの接待が終わり、取引先を見送ったあと、上司に質問をしてみました。
「なぜ、私を呼んだのですか?今日の取引先は、私が担当することになるんですか?」
すると全く悪びれることなく、「いや、ちがうよ。ただの接待、女がいる方が盛り上がるから」と言われたとき、
「女だから、うまく使われたのか」と失望し、質問しなきゃ良かったと思ったものです。
私は、この上司のように、「女性社員」を「女」として利用しようとする人には、尊敬の気持ちを持つことはありませんでした。
とはいえ、この話は、もう15年以上前のことです。
時代は、急速に変化しました。
2018年の今は、「女性活躍」として女性にあらゆる場面で活躍してもらおうと多くの企業が取り組んでいることでしょう。
そうした取り組みの中で、「女性としての性役割」と「職場で活躍」のどちらも期待するのは、矛盾しているのように思うのです。
そもそも接待とは?
そもそも接待とは、お客さまをもてなすことです。
接待が悪いとは、全く思ってはいませんし、
接待は、営業活動に効果的に活用できると考えます。
なぜなら、食事を一緒にすることで、お互いの距離が縮まって、より深い話をすることができます。
お酒が入って気分が良くなると、「ここだけの話」を聞かせてもらえることもあります。
また、好意の返報性が働き、せっかく食事をもてなしてもらったから、またお願いしようと考える方もおられますし、
まだ取引をしていない取引先は、一度は発注しようかという話に繋がることもあると思います。
(*好意の返報性とは、人から好意ある施しを受けたり、親切にしてもらったときに、それ以上の好意や親切をもってお返ししたいと思う心理のことです。)
だからこそ、「女性社員のお酌で和ませる」のではなく、担当者同士の親睦を深める時間として活用してみることをお勧めします。
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