【地獄の特訓は必要なのか?】ハラスメント研専門講師としての私の考え

こんばんは、ハラスメント研修専門講師、キャリアコンサルタントの山藤祐子です。

昨日、痛ましいニュースが飛び込んできまして、同業の方々とSNSを通して意見を交わしました。

そうです、ゼリア新薬の新入社員研修中に、新入社員が自殺されたニュースです。

http://www.asahi.com/articles/ASK885R61K88ULFA01M.html(リンク元:朝日新聞デジタル)

このニュースを見たのが、折しも、

あるメーカーで『厳しく指導をした新人研修』を終えて帰宅している最中でした。

「研修期間中に・・・」の言葉に、ただただ絶句というか、

胸が苦しくなる、詰まるような思いがこみ上げてきました。

きっと、同業の多くの講師が様々な思いでこのニュースをご覧になったと思います。

今日は、

研修講師として、ハラスメント専門講師として、そして、一人の親として、書こうと思います。

まず、研修講師としての立場から

私は研修講師として、新人研修の担当者から、

「厳しく、びしびし、やってください!」とリクエストされます。

時には、「叱ってください!」とお願いされることもあります。

しかし、そこには企業の人事担当者にとっては、

叱れないから丸投げしたいからではないと思っています。

私が一番に感じることは、「新人との関係性を壊したくない」ということだと思うのです。

担当者の方は、内定を渡してから、入社に至るまであの手この手で新人をつなぎ留め、

そして、入社後は何とか打ち解けてもらい、

配属まで辞めずにそして配属先に満足してもらえる状態にして送り届けるという

大きな大きな役割を担います。

この売り手市場において、そして人材不足の中で、どこの企業も本当に必死です。

だからと言って、優しいことばかり言っていては、配属先に送り出した後に

「ちゃんと教えてから、配属させてくれ」と新人に不足があるとクレームを言ってきます。

なぜなら、新人を受け入れる現場は、どこも余裕がなく、

丁寧に教えてあげられる時間もないというのが多くの企業の現状だからです。

だから、新人研修で厳しく指導をして、配属後に困らないようにしたい。

しかし、あまり厳しくして、

担当者との間に溝が生まれると困ったときに相談してくれないのも困る。

そこで、外部の講師にお願いしようということになるのだと思います。

私は、内省で出来ないことを担うのが外部講師だと思っているので、

リクエストをしっかりと請けて実践をします。

ただし、厳しくするには意味があることを新人の方々には伝えます。

地獄の特訓とは

今回の問題になった研修では、あるニュースの情報では、

朝6時~夜中までのタイムスケジュールだった日や、

大声を出したり、執拗に自己開示を求めると言った内容だっと書いてありました。

実際に私は20代のころ、この『地獄の特訓』を経験しました。

私が勤めていたベンチャー企業では、

幹部社員が講師となり、実際に社員に対して、長時間の研修を行いました。

ですから、私自身が受講したことも何度もありますし、

私自身が講師として、指導した経験もあります。

「あほ!」「何やってんねん!」「もっと大きな声出せ!」「殻を割れ!!!」と言われながら

何度も泣きながら大きな声を出したり、

自身がつらかった経験を話、これからどうしたいか叫んでいました。

私が受講者として体験した研修で感じたことは、

あまりに長時間拘束(朝9時~夜中2時が3日間続く)され、

何度も大声を出したり、

泣きながら自分のことを話していると、

意識が朦朧として、講師にとにかく「イエス」と言いたくなりました。

ある意味の洗脳状態です。

人は眠らないと、脳が休まらず、正常な判断が出来なくなると言われています。

非常に危険な状態で研修をしていたということです。

そして、講師としてこういった研修をしているときに感じたことは、

講師としての「絶対的存在」でした。

私の言うことを聞かないとどうなるかわかっているのか?というような

絶対的な存在として君臨していく意識が芽生えていきました。

今回の事件の研修会社がどうだったか、分かりませんが、

私自身は、まさに地獄の特訓にふさわしい鬼軍曹の様な気持ちで

当時は登壇していたと記憶しています。

当時は、会社が大きくなっていく真っ最中で、

いかに「忠誠心」をもって裏切らず共に働くことを求められました。

そのため、そういった研修が会社として必要だと判断したのだと思います。

かれこれ、20年前の話です。20世紀の話です。

いけいけどんどん、24時間戦えますか?って平気で言ってた時代です。

では、今21世紀の私は講師として、どうしているかと言うと、

新入社員に伝えること

『厳しくビシビシ』が私の新人研修の印象のようですが、

厳しくするからといって、『ばかやろー!』や『天狗になるな!』は言いません。

これは、暴言だからです。パワハラです。

相手を大人として、接する。これがまず基本です。

そして、私がとにかく新入社員に注力することは、

「社会に受け入れてもらえる」態勢にすることです。

ビジネスマナーを実践してきれいなお辞儀を教えてたいわけでもなく、

敬語をきれいに使えるようにすることでもなく、

とにかく、社会に受け入れてもらうために考え行動する方法を実践しながら体で覚えて貰うことです。

いいところを探す

研修講師になって、10年以上になりますが、いつも愛情持って相手と対峙すること。

新入社員の『いいところ』を探して、本人になるべく伝えるようにしています。

 

これは厳しくしようとブレない気持ちです。

これから社会人になる彼らを後押ししたい、背中を押したいといつも思っています。

働く楽しさを伝えることが私が講師になった原点でもあるので、

この気持ちにブレることはありません。

違いを受け入れる、それから始まる

ある企業の担当者とこんな話を聞きました。

「昨年から、新入社員が研修中に有給申請があるんです。驚きました~~~」と。

私も確かに違和感を感じました。「研修期間中に有給使う?!」

「熱があろうと這ってでも来い!」と言われて育った私からすると、「甘い!!」と一瞬思いました。

しかし、次に思ったことは、それが「違い」なんだと考えたのです。

『あ~~~、この感じ方が摩擦を生んでしまうのかもしれない』と。

多様性を生きる時代、多様性を受け入れる時代。

管理する側、教える側が、変わらなきゃいけないのです。

そんなことを考えながら、ゼリア新薬の記事を読みました。

ということで、結論。

現在の企業の新入社員研修に、『地獄の特訓』は要りません。

厳しさに、相手を思いやる気持ちや、愛情が無ければ、ただのパワハラです。

最後に親として

ご両親のお気持ちを考えると涙しか出てきません。

無念でならないだろう。

大切に育てた我が子が、命を落とす。

もっと出来ることは無かったのかと何度も何度もお考えになったに違いないと思います。

こんなことは二度と起こしてはいけないのです。

一人ひとりが大切な命

心から、心から、ご冥福をお祈りいたします。

今日もお読み下さり、ありがとうございました。

投稿者プロフィール

山藤祐子
山藤祐子ハラスメント対策専門家
ハラスメント研修専門講師
国家資格キャリアコンサルタント

ハラスメントとは、あらゆる分野における「嫌がらせ」「迷惑行為」のことです。

企業においてハラスメントを防止するための研修を行っています。

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