ジャニーズ事務所の会見に見る「見て見ぬふり」をする企業文化の怖さとその対策

こんにちは、ハラスメント対策専門家の山藤祐子です。

2023年9月7日、ジャニーズ事務所がジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害問題について、公の場で初めて認め、謝罪をしました。

セクハラ被害経験者としては、この一連のニュースを見るたびに自分の体験がフラッシュバックし、吐き気が抑えられなくなっています…

私と同様に感じている方は、少なくないかもしれません。

私個人としては、被害者の方に対し、何もできませんが、被害に遭われた方々の心の中が、一日も早く安らかな静かな状態になることを願うばかりです。

ニュースで知る内容からすれば、ジャニー喜多川氏がやっていたことは、セクハラなんて言葉では片付けられない犯罪行為だと思っています。

とはいえ、事実も今後のこともわからないので、じっくりと今後の展開を見守るつもりです。

そこで、この一連のことから何を教訓とすべきか、組織の「ハラスメント対策」の視点から、私の考えを書きたいと思います。

ジャニーズ事務所が生み出したもの

会見の中で、繰り返し出てきた言葉の中に、企業としての深い闇を感じました。

それは、「ものを言えない」空気、体質であったということです。

「何もできず、何もしておりませんでした」

「得体の知れない、触れてはいけない空気っていうのはありました」

「当時であれば、何も言えなかった」

などの発言から、「ものを言えない」空気であり、問題があっても、おかしいなと感じても、何も言えない。

まさにワンマン経営だったことがわかります。

ワンマン経営とは、経営者が強い権力を持ち、単独で経営判断を行うスタイルです。

ワンマン経営が悪い、というわけでは、もちろんありません。

ワンマン経営には、経営者にすべての責任が集まり、判断も行うことで意思決定が早く、スピード感をもって方針を決められる良さもあります。

一方、社長のやり方が独善的になり、周囲の意見を無視をし経営を進めていくと、社員は経営者に嫌われないために顔色を伺い、意見ができずに不満だけを募らせることにもつながります。

そして、「イエスマン」ばかりが増えて、経営者の方針、判断、言動に間違いがあっても何も言えなくなります。

特に、オーナー企業で、そのトップがビジネス手腕があり、力があればあるほど、社員は何も言えなくなっていく…

ジャニーズ事務所が、まさにそういう状態だったことは明白です。

何が起こっても、問題だと感じても、「見て見ぬふり」をするのが当たり前になっていったのでしょう。

だからこそ、この犯罪を助長させたのだと思います。

ジャニーズ事務所は、タレントを排出する一方で、多くの被害者、そして「見て見ぬふり」をする企業文化をも生み出してしまったのではないでしょうか。

「見て見ぬふり」が常態化することの問題点

では、「見て見ぬふり」が常態化することの問題点を5つ取り上げます。

  1. 問題が大きくなる
    目の前で起こっている問題を無視することは、誰もその問題を咎めないことになります。
    つまり、問題が悪化する可能性があります。
  2. 対立が生まれる
    問題を「見て見ぬふり」をすることで、平等性や公正性が低くなり、不平等感を感じる人が増えていくことになります。
    こういった状態では、対話をする機会が失われていくため、○○派などの派閥ができ対立が生まれます。
  3. 組織への信頼が失われる
    問題が無視されることで、働く人は組織を信頼できなくなります。
    「この会社でまともな仕事をしても、どうせ認めてもらえない」となれば、働く意欲も失われ、生産性が低下します。
  4. 問題行動を正当化し始める人が出てくる
    問題行動をしていても、誰もとがめない、見て見ぬふりをする、指摘をしないとなると、「これはやってもいいこと」と自分の問題行動を正当化し始めます。
    「売り上げを上げるためには、こうするしかない」
    「これくらいのこと、他の会社もやっているんだから」
    と自分の行動は正しいことだと思い始めます。
  5. 同じようなことをする人が増える
    もし、問題を起こしている人が会社の中で優遇されている場合、「こういうことをしても、この組織では問題がない」と思う人が出てきてもおかしくないですし、同様の問題行動をする人が増えかねません。
    「あの人はパワハラしているけど、昇進したから、成績が良ければ、これくらいはいいんだ」など、問題行動をしても良いのだと思わせてしまいます。

「見て見ぬふり」をさせないために組織がすべきこと

次に組織がすべきことをピックアップします。

1.組織ルールの明確化と周知徹底

組織としての考えを明確にし、従業員に対してコンプライアンス重視の基準を明確にし、周知徹底することです。

一人ひとりの従業員がわかるように、なるべく具体的にすることがポイント。

マニュアルに書けないような内容は一切、なくすことが大切です。

2.相談できる窓口を内部、外部に設ける

2022年6月に、改正公益通報者保護法が施行されました。

企業の不祥事による被害の拡大を防止すること、また、不祥事をより早期に発見・是正し、被害を防止することが目的です。

なにより、安心して通報ができて、通報者が保護されるためでもあります。

たとえば、通報したことを理由に、解雇などの不利益をうけることのないよう、通報者を守るための法律です。

300人以下の中小企業は努力義務ではありますが、この法律が改正された目的をよく検討し、相談窓口を設置することを勧めます。

相談窓口があることで、従業員の安心・安全に繋がるからです。

「ものを言えない」組織をつくらないために、風通しが良い環境を作る一助となるはずです。

3.定期的な点検

ルールを作っても、しっかりと運用できていなければ、絵に描いた餅…何の役にも立ちません。

組織のルールが守られているか、行動規範通りにできているか、職場のチェックを行います。

そのことで、従業員への組織ルールの周知にもつながります。

たった一度通達しただけで、組織全体に行き渡ると思ったら大間違い。

繰り返し、何度も周知するためにも、定期的な点検は欠かせないものです。

4.定期的な勉強会・研修を実施する

コンプライアンスに対して意識が高い人もいれば、「そんなこと言ってたら、仕事にならない」と思う人もいるのは事実。

だからこそ、定期的な勉強会・研修を実施し、全社員が同じ考え、捉え方になるように繰り返しが必要です。

私たちが心がけるべきこと、できること

自分が知りたいから、興味があるからと、性被害を受けたかもしれない人に質問するのはナンセンスです。

また、今回の会見を見て、自分の周りにいる「元ジャニーズ」の人に興味本位な質問を投げることも止めましょう。

「本当のことを言ったほうが楽になるよ」なんて、軽々しく言わないことです。

話すか話さないかは本人が決めること。

誰に話すか、何を話すかも、本人が決めることです。

強要して、強制して、言わせることでもなければ、中傷して、傷つけていいことではありません。

また、私が「これは絶対やってはいけないと思うこと」がひとつあります。

それは、セカンドレイプです。

セカンドレイプとは、性犯罪、性的暴行の被害を受けた人に対して、第三者が、精神的な苦痛を与えることです。

たとえば、性被害の苦痛を思い出させるような言葉を投げたり、被害を受けた原因の一端が被害者自身にもあったというような中傷めいた発言をしたりなど。

ジャニーズ事務所の記者会見でも、東山新社長に対して「あなたも性被害に遭っていたか?」を執拗に訊く記者がいました。

すでに「私自身は被害を受けたことがない」と話しているにもかかわらず…です。

本当に悲しいことだなと思うと同時に、怒りさえこみあげる言動だったと思います。

最後に

今回のジャニーズ事務所の記者会見は、英国放送協会(British Broadcasting Corporation)、いわゆるBBCの報道に端を発します。

2023年3月7日に「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」として報道されました。

日本は恥の文化だからこんなことが起こったという人もいますが、海外でも権力者による長年の性被害は起こっています。

ハリウッドの元大物映画プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタイン受刑者が起こした犯罪は、「#Me Too運動」(セクハラや性的暴行などの性犯罪被害の体験を告白・共有する際にSNSで使用されるハッシュタグであり、「私も被害者である」という意味で「私も」を意味しています)のきっかけとなる事件です。

アメリカの映画プロダクション「ミラマックス」の設立者で、アメリカ映画界で多くの作品を手掛け、アカデミー作品賞をプロデューサーとして受賞しています。

しかし、長年にわたり多数の女性を暴行し、事件を口外すれば映画界にいられなくするなどと、被害者を脅迫していました。

逮捕のきっかけは、ニューヨークタイムズ紙がハーヴェイ・ワインスタインによる、数十年に及ぶ性暴力と虐待告発する記事を掲載したことです。

さらに著名な女優が実名で被害を告白したことで、捜査当局も動き、強制暴行や強姦、性的犯罪行為、性的虐待などの容疑でニューヨーク市警から逮捕されました。

2020年にニューヨーク州で有罪となり、23年の禁錮刑。さらに今年2023年ロサンゼルスで、さらに禁錮16年の判決が出たので、現在70歳ということからも、事実上の終身刑となるとみられています。

この事件をきっかけに、アメリカのエンターテイメント業界で「自分も同様の被害を受けた」とする告発が現れるようになり、著名なTV番組司会者や俳優が解雇されるケースが相次ぐことになりました。

イギリスでも、同様の事件が起きています。

BBC元人気司会者は、ジミー・サビル氏は死後に少女・少年への性的虐待が発覚しました。

子どもが虐待されることを知っていたジミー・サビル氏が司会の人気番組「Jim'll Fix It」(ジムにおまかせ)の元プロデューサーは、サビル氏と子どもたちを二人っきりにするなとスタッフに指示していたそうですが、止めれなったんですね。

最年少は8歳だったそうですが、生きている間には逮捕・起訴することはできませんでした。

BBCの管理職は知っていた人もいたようですが、人気スターで、力もあり、ボランティア活動なども積極的に行っており、英国より「ナイト」の爵位を受勲したほど、イギリス国民に愛され、女王から認められていた人でした。

事件が明るみになってから、彼の名前がついた地名、道路標識を一切撤去。

お墓もすごく大きいものだったようですが撤去したようです。

イギリスでは、この事件後、芸能人による性的虐待の大規模な捜査が始まり、大物芸能人が次々と逮捕されたそうです。

ジャニーズ事務所のことは、

海の向こうの話ではなく、ここ日本で起きてしまったおぞましい事件。

同じことが起きないように、企業研修を通じて「見て見ぬふり」を少しでもなくしていきたいと、改めて決意した一件です。

ジャニーズ事務所の今後を、国民の一人として、注視していこうと思います。

投稿者プロフィール

山藤祐子
山藤祐子ハラスメント対策専門家
ハラスメント研修専門講師
国家資格キャリアコンサルタント

ハラスメントとは、あらゆる分野における「嫌がらせ」「迷惑行為」のことです。

企業においてハラスメントを防止するための研修を行っています。

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