ホントにパワハラ? 忘年会前にチェックしておきたい。上司からの言葉がけ事例集。
こんにちは、ハラスメント対策専門家の山藤祐子(ざんとう ゆうこ)です。
2023年の年末は、3年ぶりに社内での忘年会が復活となる企業が多いようです。
ところが上司の方は、部下を忘年会に誘いたくても『この誘い方は、パワハラと言われるのではないか…』と思うと、つい及び腰になってしまうという声もあります。
そこで今回は、上司からの言葉がけに特化した事例をご紹介いたします。
ぜひ、忘年会や新年会前にチェックしていただき、パワハラを恐れずに部下とコミュニケーションをとってください。
パワハラか、パワハラじゃないかの線引への誤解
※パワハラとは、パワーハラスメントの略語です。
多くの方は、誤解しています。
「相手がパワハラだと感じたら、パワハラだ」と。
まずその理解を改めてほしいと思います。
パワハラと決定付けるポイントは、次の3つです。
- 業務の適正な範囲なのか、業務の逸脱なのか
- 力関係が圧倒的にあるかどうか
- 人格を否定するようなことを言われたのか
つまり、業務に必要なことであればパワハラには当たりません。
「パワハラだと感じた」だけでは、事実なのかがわかりませんから、これもパワハラではありません。
思い込みで、相手に「それはパワハラです!」と、脅すような言い方をすることは、逆パワハラの可能性もありますから注意が必要です。
ケーススタディ これはパワハラに当たる言葉がけ?
まず、前提としてパワハラは「発言の一部」を切り取って判断することではありません。
また、会社の忘年会は業務ではないとしても、上司の指揮命令が発生する場であることから「職場」とみなされます。
酒の席の上だからと許されることではないので、注意しましょう。
忘年会には、必ず参加するように!
これだけでは、パワハラとは言えません。
ただし次のような言い回しが、執拗に繰り返されると、パワハラの可能性が高まります。
- 忘年会に参加しなければ、お前は昇進できないぞ
- 次のプロジェクトに参加したければ、忘年会に参加するように
- おまえ、忘年会に参加しないなんて、人間としてどうかしてるぞ
新人なら、忘年会の幹事をやりなさい!
これだけでは、パワハラとは言えませんし、本人がやりたくないからパワハラとも言えません。
新人が幹事を担当することに必要性があるか、どうかです。「社員の名前と顔を覚えてもらうため」という目的や「普段から顧客の接待をセッティングする業務がある」場合は、経験として必要でしょう。
ただし、業務に関係のない飲み会や合コンの場合は、パワハラの可能性が高まりますし、次のように人格を否定する言い回しはアウトです。
- 新人には酒を飲む権利なんかない!幹事でもやってろ!
- 忘年会の幹事をやらなければ、会社を辞めてもらうからな
- 言われなくても幹事をやるのが新人だろう。そんなこともわからないなんて非常識すぎる
もっと飲む? おかわりする?(と、部下にたずねる)
グラスが空いているから、もっと飲むか?とたずねるのは、パワハラにあたりません。
ですが、飲みたくない相手に「飲め!」と強要するのは、業務上の必要相当性がないので、アウトです。
最近では「ノンアルコール」派も多くいることを、上司は理解しておくほうが良いでしょう。
次のように、昭和の言い回しをしている方は要注意です。
- おまえ、オレの酒が飲めないのか!文句を言わずに飲め!
- 酒も飲まないのに、なにしに忘年会に来たんだ?
- 遅刻してきた罰として!一気!一気!一気!
料理が残っているね。若いんだから食べなさい。
一度言うくらいならいいとしても、部下から「けっこうです」「もう食べられません」と断られたのに、しつこく強要するのはパワハラにあたります。
食事をするのは、業務ではないですから。
次のような言い方を繰り返さないように注意が必要です。
- 体が大きいんだから食べられるだろう。3人分くらい余裕だな!
- こんないい料理、ふだん食えないだろう。貧乏なんだからいまのうちに食っとけ
- 食べ物を残すなんて、今度の評価に響くかもしれないね
余興になにかやれよ!
いまどき、部下に「芸」をさせるということは、時代錯誤のような気がしますが、これだけではパワハラとは言い切れません。
もちろん、自分から進んでやる場合は問題ないですが、嫌がる部下にしつこく強要するのはパワハラの可能性が高いです。
ほかにも次のような言い回しは危険です。
- そこのチームは売上が一番低かったから、全員で踊れ!
- 芸のひとつもできないなんて、立派なサラリーマンになれないぞ!やれ!
- 余興なんて当たり前だよ。上司を喜ばせるのが部下の仕事だろう。給料もらってるんだから!
これからもがんばってくれよ!なぁ!(と、肩をたたく)
上司からすれば「軽く触れた」だけでも、受け手が「強く叩かれた」とか「いやらしい触り方をされた」などと感じることがありますから、やめておくのが無難です。
もちろん、それだけでパワハラになるとは言い難いですが、酔ってくると言動が大げさになることもあります。
しつこく繰り返したり、やめてほしいと言われているのにさらに激昂するなどすれば、火種になりかねません。
注意しましょう。
まだいいじゃないか、朝まで飲もう!
こう誘っておいて、断られたら引き下がるのであれば良いのですが、嫌がる部下を何度も誘ったり、交換条件を出し強引に連れて行ったりすれば、パワハラになる可能性が高まります。
たとえば、上司はとくに誘っていなくても、なんとなく雰囲気的に帰りづらく、終電を逃してしまったというケースは、パワハラではありません。
雰囲気ではなく「事実」がポイントだからです。
ここまで、いかがでしたでしょうか。忘年会での事例をご紹介しました。
なんでもかんでも「パワハラ」と言われそうで、部下に声がけできないという上司の悩みは、とても増えています。
しかし「何も言わなければ、何も起きない」と考えていては、上司の責任は果たせません。
上司は部下を指導するのが仕事ですから、適切なコミュニケーションがとれるように、日頃からパワハラの線引をしっかり理解し、部下にも理解してもらう機会を作ることが大切です。
忘年会をきっかけに、パワハラの線引について考える機会となることを願っています。
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