【研修担当者の方々へ】ハラスメント研修の効果を上げるために必要なこと
こんにちは、ハラスメント研修専門講師の山藤祐子です。
今年(2019年)5月29日、私たちの国で初めてパワハラ防止法案について可決され成立しました。
まず、パワーハラスメントを、以下のように定義をしました。
(1) 優越的な関係を背景に
(2) 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
(3) 就業環境を害する
そして、企業内で相談窓口の設置や、パワハラ対処の方針を企業内でつくり、周知啓発するようにと決まったわけです。
大企業で2020年4月から義務化の見込みです。
今回の法改正の大きなポイントは、悪質なケースは企業名を公表するということです。
人材不足が蔓延している中で、悪質なハラスメントが起こった『ブラック企業』と公表されたら。。。
優秀な人材を採用出来なくなります。
働いている人たちも、やる気がなくなりますよね。
働いていても、社名をいうのが恥ずかしくなるかも知れませんし、
取引先から、お断りが入るかも知れません。
内容によっては、不買運動が起こるかも知れません。
そうなると、株価にも影響がでることでしょう。
そして、働く人が更にやる気を失い、売り上げが下がる。
まさに負のスパイラルです!
こんなことが起こっては大変です!
何からやればいいか?と考えたときに、最初浮かぶのが周知徹底をすること・・・
そうです研修を実施することです。
でも、研修やっても効果が期待できないのでは。。。と相談されることが多いので
今日はハラスメント研修を効果的にするための方法を書きたいと思います。
さて、ハラスメント研修の効果を上げるためには、何が必要か・・・
それは、全社員に同じ内容の研修を受講いただくことです。
多くの企業が管理職だけを対象に実施しているケースが多いのですが、私は全社員を対象にすることで効果が出ると思っています。
全社員にハラスメント研修をする理由
(1)同じ基準を持つことができる
全社員に研修をする理由は、「同じ基準を持つ」こと、これが最大の利点です。
研修をしていると、ほとんどの企業で参加者から聞こえてくる言葉は、
「相手がハラスメントと言えば、ハラスメントなんでしょ?」です。
いえいえ、そうではありません。
法律では、「相手が言えば、ハラスメントです」とは書いていません。
でも、何となく聞きかじりで、「相手が言えば、ハラスメント」という意識が広がっているケースが多いため、
できるだけ「グレーゾーン」と言われる、どちらに判断していいか分からない事象について、
丁寧に説明し、理解をしてもらうことが大切なのです。
なぜなら、「上司に怒られたからパワハラ」ではないし、「売り上げが悪いことの理由を問い詰められたのでパワハラ」ではないからです。
もちろん、上司の言動が「必要性」を欠き、「相当性」を越えた場合には、パワハラということになります。
だからこそ、「グレーゾーン」の様々なケースを管理職も一般職もそれぞれの立場から考えてもらうことで、
考えの違い、捉え方の違いを理解いただくことができます。
セクハラにおいても、「相手が嫌だと感じたらセクハラ」というわけではありません。
相手の主観を重視しつつ、一般女性従業員、一般男性従業員はどう感じるかという視点も大切なのです。
研修では、「一般的な感じ方」をどうやって出すのかという点についても、説明をして理解を深めてもらいます。
(2)会社の本気度が伝わる
会社の規模に関わらず、全社員に必須で研修を受講してもらうことは、時間もお金も手間もかかります。
それでも、全社員に研修をすることを会社が決定したならば、「ハラスメントは許さない」という強いメッセージを伝えることができます。
会社の姿勢、会社の本気度を伝えることができるのです。
現在も、ある企業の全社員向け研修を実施しています。
その企業では、正社員、契約社員、だけではなく、派遣社員やアルバイトに至るすべての方々に研修を受講してもらっています。
参加者の意識は様々ですので、参加意欲が無い方も中にはいらっしゃいます。
しかし、同じ基準や目線合わせをすることによって、少なくても会社がやろうとしていることはしっかりと伝わっているはずです。
(3)声を挙げやすくなる
全社員に同じ研修をすることは、会社が「ハラスメントを許さない」という姿勢を見せることだと書きました。
許さないということは、何かあれば声を挙げて良いという発信にもつながります。
今まで、言わなかったこと。
言いたかったけど、周りに遠慮して言い出せなかったこと。
どこに言えば、誰に言えば、分からず悩んでいたこと。
そういう胸の中でずっと我慢しながら、「モヤモヤ」とした気持ちを抱えている方々の声が挙げやすくなるのです。
そのため、研修を開始すると、とにかく相談件数が増えます。
研修中にも、私に直接相談される方は後を絶ちません。
そうすることで、会社は組織の中で起こっていることが見えてきます。
現状を掌握すると、おのずと解決方法も見えてくるはずです。
「ハラスメントをなくそう!」といくら高らかに目標を掲げても、実情を把握できていなければ、絵にかいた餅になり、
働いている方々は、「とはいっても、ハラスメントは無くならないし、職場は変わらない」となれば、やる気をなくすことになるでしょう。
「声を挙げやすい」ということは、まさに風通しの良い状態であるということです。
ハラスメントに限らず、「声が挙げやすい」状態というのは、組織にとってプラスに働きます。
例えば、問題があっても、すぐに報告をすることで解決が早くなる。
仕事の進め方で意見があれば、上司に伝えることで、進め方の改善ができる。
アイデアを同僚と意見交換することで、新しい商品の開発の糸口になる。
「声が挙げやすい」というのは、会社にとってプラスに働くことが多いということです。
ただし、覚悟が必要です
最後に、ハラスメント研修を効果的にするために、全ての社員を対象に行う理由をまとめます。
(1)同じ基準を持つことができる
(2)会社の本気度が伝わる
(3)声を挙げやすくなる
この3点です。
本当に、全社員研修をすると、一気に意見が挙がります。
例えば、
「5年前、マネージャーから1時間以上、答えが出ないことを問い詰められました」
「3年前、当時の上司から執拗に誘われました」
「半年前、実は上司に能無し、やめてくれと言われました」
このように、今起こっていることだけではなく、
以前、起こったハラスメント事象も声が挙がります。
「時効はありますか?」と質問されたこともありました。
その方は、30年前にされた上司からのパワハラを、
ずっと忘れらずにいると苦しそうに話されました。
だからこそ、どんな声が挙がっても、受け止める覚悟が必要なのです。
いかがでしょう、皆さんの会社は、準備は進んでいますか。
法律の施行は、来年(2020年)4月です。
待ったなしの状況で、組織を変えていくのは、「やる」と決める覚悟にかかっています。
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