職場で急増しているリモートハラスメントの実態と対策
こんにちは、ハラスメント対策専門家の山藤祐子です。
先日(2020年9月16日)、明石家さんまさんが司会をされている「ホンマでっか?!TV」に出演し、
ハラスメント評論家として、以下の3点の具体例を説明しました。
・リモートハラスメント
・部下からのハラスメント
・ハラスメントハラスメント
テレビでは、詳しく説明が出来なかったので、このブログで一つひとつ解説をします。
今回は、最近職場で急増している「リモートハラスメント」リモハラについて解説します。
リモートハラスメントとは
リモートハラスメントは、リモートワークやテレワークで起こるハラスメントをさします。
リモハラ、テレハラと言われますが、パワハラに分類されるものと、セクハラに分類されるものがあります。
リモートパワハラとは
リモートパワハラは、以下のパワハラ防止法(労働施策総合推進法)に照らし合わせて考えます。
(1)同じ職場で働く者に対して
(2)職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に
(3)業務上、必要かつ相当な範囲を超えた言動により
(4)労働者の就業環境を害すること
「自宅だから、職場ではない」とお考えになるかもしれませんが、
職場の定義は「労働者が働く場所」を指すので、自宅であろうと、働いている時間は自宅が職場となるわけです。
リモートパワハラの具体例
「どうせ、自粛で自宅にいるなら残業代要らないだろう」
「自宅にいるからって、のろのろ仕事やってんじゃないよ!徹夜して仕上げろ!」
これらは、明らかに仕事上の必要かつ相当な範囲を超えているので、パワハラ発言といえます。
リモートセクハラとは
リモートセクハラは、以下のセクハラ指針に照らし合わせて考えます。
(1)同じ職場の働くものに対して
(2)相手の意に反する性的な言動を行ったり、性的な行為を強要することで
(3)労働者の就業環境を害すること
リモートセクハラの具体例
「その後ろに映っているベッドでいつも寝てるの?ドキドキするね」
「部屋の中、もっと見せてよ」
このように、性的なことが連想される発言を繰り返すことです。
リモートハラスメントの実態調査
少し前のデータになりますが、弊社でリサーチをした結果をご紹介します。
4月の後半、自粛が続く中、リモートでハラスメントをされたという相談が増えたため調査をすることにしました。
調査時期は、5月の連休明けです。
テレワーク業務で上司とコミュニケーションをとっている会社員110名を対象にインターネットによるアンケート調査を実施しました。
「あなたは在宅でのテレワークに関して、上司とのコミュニケーションで不快感を感じたことがありますか」
「何度もある」・・・41.8%、
「ある」・・・37.3%
テレワークで上司とのコミュニケーションにストレスや不快感を感じている部下は、約8割以上
「あなたは在宅でのテレワーク実施により、出社していた際と比較して、上司とのコミュニケーションによるストレスや不快感に変化はありますか」
「かなり増えた」・・・25.5%
「少し増えた」・・・40.9%
7割近い方々が、リモートワークになり、上司とのコミュニケーションにストレスを感じているという結果になりました。
具体的な声としては、以下の通りです。
・38歳:やたらとweb会議をやりたがる。
・38歳:仕事をサボっていないかいちいちチェック。
・31歳:slack上での言葉遣いがきつい。
・32歳:電話がかかってくること。
・33歳:ほとんどメールでのやり取りなので、ニュアンスが正しく伝わらないとストレス。
これらの声は、ハラスメントとは言い難いものですが、明らかに上司とコミュニケーションが上手くとれていない様子が伺えました。
なぜ、リモートハラスメントは起こるのか
では、なぜリモートハラスメントが起こる原因を解説します。
1)管理側も管理される側も慣れていない
多くの企業が、この春から始めたリモートワークで、準備が整っていないままスタートをされたことでしょう。
そのため、管理する側も管理される側も慣れていないため、リモートハラスメントが起こっていると考えます。
ここで上司側の調査結果をご紹介します。
こちらも調査時期は5月半ばと時期は少しさかのぼりますが、調査結果から管理側も不慣れな様子が読み取れます。
対象は、テレワーク業務で部下とのコミュニケーションをとっている上司109名です。
「あなたは現在、リモートでの部下とのコミュニケーションの取り方に悩んでいますか」
「かなり悩んでいる」・・・12%、
「少し悩んでいる」・・・38.5%
実は、こういう声は9月現在も非常に多く寄せられます。
例えば、以下のような内容です。
「相手の状況が見えないので、仕事をしているのか分からない」
「管理の方法が確立していないので、相手の様子が見えない」
管理職の方々も、少しずつ慣れてきたものの、まだまだオフィスで全員が顔を合わせて仕事をしているような管理が出来ず、悩んでいるようです。
(2)人の目がないため、エスカレートしやすい
オフィスで顔を合わせて働いていると、もしも「カッ」となっても他の社員の手前、感情を抑えることができます。
ところが、リモートワークだとそうはいきません。
感情の矛先は、画面上の相手だけとなり、誰の目も感じない。
抑制がかかりにくくなるので、行き過ぎた言動になってしまい、ハラスメントを起こしてしまう可能性があるのです。
実際に、「感情が抑えにくくなった」という声はよく聞きます。
また、在宅で感情がエスカレートしやすい理由は、他にもあります。
最近、よく目にする「テレワークうつ」などの心の不安定さも、エスカレートしやすい要因になると考えます。
職場環境の変化、対人コミュニケーションの変化、しかし押し寄せる仕事。
こういった中で心身ともに疲れ、知らず知らずのうちの心が蝕まれていく・・・
そういう症状を自身で分からず、もやもやを部下に吐き出している可能性もあるのではないでしょうか。
(3)自身の言動に無自覚
これはリモートワークに限ったことではありませんが、自身の言動を省みることが無い方々をさします。
また、職場のハラスメントに関心がなく、理解しようともしない方々でもあります。
「パワハラなんて言ってるから、仕事が捗らないだよ」
「ハラスメントは受ける側の感覚で、相手が勉強不足」
とばかりに、ハラスメントを受ける側の責任にして、自身の言動を振り返らないのです。
その方々の言い分としては「自分たちもこうされてきた」という経験からの判断なので困りものです。
実際に、調査結果ではハラスメント防止法に関して、理解されていない方が半数以上いらっしゃいました。
こちらの調査結果をご覧ください。
「あなたは、2020年6月に施行されるパワハラ防止法に関する内容を知っていますか」
「あまり知らない」・・・39.5%
「全く知らない」・・・16.5%
これでは、企業側がハラスメントを無くそうと思っても、浸透させるのは難しいです。
リモートハラスメントを起こさないための対策
これらの原因を踏まえて、実際に職場でリモートハラスメントを起こさないためにするべきこと、
私は以下の3点を提案します。
(1)リモートワークの運用ルールを明確にする
既にリモートワークが始まって、半年近くになりますが、未だにルールが明確ではないとお聞きすることがあります。
そのため、「会議などで、ほとんどの参加者がビデオをオンにしているけど、数名がしない。強制したらパワハラと言われそうで言えない」という発言に繋がるだと思います。
例えば、朝のミーティングの時は体調管理も含めて、ビデオをオンにする。
業務内容などの打ち合わせの時には、仕事の資料を画面共有しながら話すのでビデオはオフにする。
質問はチャットでいつでもできるようにする。
など、運用ルールを明確にし、全員で共有し同じ認識をもって行うことでハラスメントを防ぐことが出来ます。
(2)仕事を見える化する
リモートワークで管理職側が不安になるのは、部下が仕事をしているかどうかが分からないということが多いです。
だからこそ、仕事を見える化できるようにツールを活用することをお勧めします。
実際に、4年前から在宅ワークを取り入れているマーケティング会社の実例をご紹介しましょう。
事例
- 朝会・夕会を毎日実行し、業務のデイリーで指示、確認
- 1.を受けて、事前にgoogleカレンダーに各自の仕事(業務)を入力
- チームの見える化アプリ「Trello」を使用
- コミュニケーションツール「chatwork」利用
最近は、便利なツールが増えているので、活用できるものが多いはずです。
ただ、会社によってツール活用はセキュリティ上の問題がある場合がありますので、コンプライアンス部門に確認してくださいね。
(3)個別ミーティングは録画機能を使う
誰かの視線があることは、自身の感情を抑えるために有効に働きます。
そこで、個別ミーティングを録画することをお勧めします。
「お互いの齟齬がないように、念のため録画をしよう」と上司から提案するのも一つですし、
「伝えてもらった内容を、しっかり記録したいので録画させてもらいます」と部下から提案してもいいと思います。
こうすることで、「言った」「聞いてない」といった行き違いもなくなりますし、
意見の齟齬を無くすことにもつながります。
とはいえ、そもそも職場のハラスメントに関して知識がなくては始まりません。
まずは、しっかりと管理職の方々に、パワハラ防止法について理解を深めて頂くこと。
そして、管理される部下側の方々に対しても、法律を理解頂くことが必須です。
管理する側も、管理される側も、共通認識の下で仕事をすることがハラスメントの対策になります。
ハラスメント対策の研修は、オンライン、集合研修、どちらでも実施できます。
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