【人事担当者からの質問】「LGBTの人を、採用しなくてもいいよね?」

こんにちは、ハラスメント研修専門講師の山藤祐子です。

2018年2月のニュースで、千葉県柏市にある公立中学校の制服に関する新しい取り組みが、報じられました。

その新しい取り組みとは、「男女とも制服が選べる」というものです。

LGBTに配慮をして、男性生徒・女子生徒の性別にかかわらず、スラックス・スカート・ネクタイ・リボンを自由選択ができるとのこと。

恐らく、公立校としては初の試みのようです(2018年2月の時点では)

そのニュースを読みながら、私の頭の中で学生時代に出会った大切な友人であるAさんを思い浮かべていました。

LGBT・・・ハラスメント防止研修をする中で、私が熱い思いをもって、必ず取り上げるテーマの一つです。

 

LGBTとは?

 

「LGBT」という言葉を聞いて、何を意味しているか、ご存知でしょうか?

ここで大切なことは、「性のものさし」です。

「性のものさし」とは、4つの側面から考えます。

身体の性・・・生まれた時に医師が決めた性

心の性・・・心が感じている性

恋愛対象の性・・・誰が恋愛対象なのか

社会的な性・・・社会の中での性

LGBTを詳しくご説明すると・・・

L(レズビアン)身体、心、社会的な性が女性で、恋愛対象が女性の方

G(ゲイ)身体、心、社会的な性が男性で、恋愛対象が男性の方

B(バイセクシュアル)身体、心、社会的な性が生まれ持った性を自認にして、恋愛対象が男性・女性双方の方

T(トランスジェンダー)身体と心の性が違っている方。

例えば、生まれた性は男性だとしても、心の性が女性で、恋愛対象も男性である

また、生まれた性は女性だが、心の性は男性で、恋愛対象は女性であるという方のことを言います。

LGBTの該当者は、日本国内で13人~20人に1人と言われています。

この13人~20人に1人というのは、「佐藤さん」という名字や、左利きの方と同じくらいの人数に匹敵する割合なので、その数の多さに驚く人もいらっしゃるかもしれません。

アルバイト先の友人

ここで先に書いたAさんの話をしようと思います。

学生時代のアルバイト先の飲食店でAさんと知り合ったのは、1988年。

今から30年近く前のことです。

Aさんは、身体の性は女性でしたが、心の性は男性で、恋愛対象は女性、そして社会的な性を男性にするべく、戦っていました。

Aさんは、「自分らしく働ける場所」を探して、あちこちに面接に行ったそうですが、「男性として働く」ことが多くの職場で理解をしてもらえず、この飲食店に就職したと言っていました。

オーナーはAさんの希望を理解し雇ったのだと思っていましたが、実は本当のところは違ったようでした。

何故かというと、何かにつけてAさんを馬鹿にした言い方をしていたからです。

例えば、お客さまが「Aさんって、肌きれいね」と言ったら

「こいつね、女なんですよ。中身は」とわざわざ他のお客さまに聞こえるような大声で言ったり、

Aさんが少しでも元気がないと、

「そういう女々しいところって、ほんま女やな。」と他のアルバイトがいる前で、言い放ちました。

聞いている私たちが本当に嫌になるほど、オーナーはAさんのことを馬鹿にして、蔑んだ言い方をしていました。

そんなオーナーとは裏腹に、Aさんは、とても好青年で、いつも笑顔で好意的な方でした。

Aさんは、私たちにとてもやさしく、何かあるといつでも庇ってくれました。

お客さまからクレームがあっても、必ず盾になってくれたのは、オーナーではなくAさんでした。

そんなAさんと私は、何かと気が合い、自然に仲良くなり、少しずつ、Aさんの恋愛相談に乗るようになりました。

その中で明かされる、Aさんの苦悩。私は今でもしっかりと脳裏に焼き付いています。

私「どうしたの、元気ないね」

A「ゆうこ、また男に彼女をとられたわ」

私「そうなんや・・・」

A「これで何回目やろ・・・やっぱり、ほんまもんがええんやろか」

私「・・・・・」

私は、何も言える言葉が見つかりませんでした。

恋愛以外にも、生理のこと、身体のことも何度となく悩みを打ち明けられました。

Aさんが、女性の性を持ちながらも、心が男性のために、もがき苦しむ心の声を何度となく聞きました。

でも、当時の私には励ます言葉が見つからず、ただ、「うん、うん」と聞くだけしかできませんでした。

オーナーだけではなく、お客さまからも「おかま、おなべ」といった差別用語を浴びることは日常茶飯事でしたが、

そんな偏見と侮辱に満ち溢れた中でも、Aさんは自分を貫き通し続けました。

その後、Aさんは独立しバーをはじめ、今でも人気店として、多くのAさんのファンで賑わっています。

LGBTはちょっと・・・

男女雇用機会均等法では、性的志向で雇止めをすることは禁じられています。(2007年1月施行)

そのことを研修で伝えても、「いや、うちではLGBTはちょっと・・・」と仰る方がいらっしゃいます。

また中には、「うちには関係ないから」とハッキリと拒絶の反応を示し、

「LGBTの人を採用しなくてもいいですよね?」と質問をされたことは一回ではありません。

「テレビの中の世界だと思っていた」

「うちの会社はさっきの平均に、当てはまらないと思うから、大丈夫」

という意見を言う方もいらっしゃいます。

企業として、取り組むのは中々難しいという判断だとは思うのですが、もし人事担当者の方の個人の判断でお話しされているのであれば、ぜひ考えて欲しいのです。

自分と価値観が違う人を受け入れるのは、とても難しいことかも知れません。

しかし、働く上で性的志向は何か、不都合が起こるでしょうか。

また、仕事を遂行する能力と天秤にかけるものなのでしょうか。

確かに、医学上の性別を変えて生きていきたいという相談に乗るのは、簡単なことではないと思います。

だからといって、最初から「受け入れない」と判断するのは、早計に思うのです。

同じ「人間」として、肌の色が違うように、言葉が違うように、習慣が違うように、性的な価値観が違うだけのことですから。

まずは、当事者の方の話を聞いてみる。

そんなことから始めて欲しいと、心から願っています。

投稿者プロフィール

山藤祐子
山藤祐子ハラスメント対策専門家
ハラスメント研修専門講師
国家資格キャリアコンサルタント

ハラスメントとは、あらゆる分野における「嫌がらせ」「迷惑行為」のことです。

企業においてハラスメントを防止するための研修を行っています。

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