「これで終わりやないから」の言葉通り、恐怖の始まりが

人から期待されると燃えるタイプなので、店長になってから店舗の売り上げは目覚ましく伸びていきました。

売り上げが伸びてくると、毎月一度開催されていた本社の店長会議に参加しても注目されることが増え、本社の方々と話す機会も増えていきました。

そして、店長になって半年ほど経った時に、恐ろしいセクハラがスタートしました。

行為者は、本社の経営企画部長。頭が良く、皆が憧れる素敵な方でした。

私も他の店長同様に「素敵だな」と思っていました。

ある日、店長会議の帰りに他の店長と分かれ一人で駅に向かって歩いていると、すぐ後ろに企画部長が立っていました。

驚いた私にむかって「偶然だね。せっかくだから、少し飲もうよ」と言いながら、誘ってきました。

二人きりで飲むことは違和感があったものの、「憧れの部長と飲めることは、そうないかも」と思い、居酒屋に入りました。

そこで、部長から婚約者がいる話をされたので、私も調子に乗って結婚の約束をしている男性がいることを話しました。

その帰りに事件が起こりました。

駅に向かう道、仕事のことを話している最中にいきなり肩を抱かれ、引きずられるようにラブホテルに連れていかれました。

生まれて初めて、ラブホテルの玄関の柱に全力で捕まり、必死に「止めてください」を繰り返しました。

企画部長は、「いいじゃないか!お互い結婚するんだし。俺のこと好きなんだろ?」と笑いながら言いました。

その時の表情は、30年近く経った今でも忘れません。

薄気味悪い微笑みを浮かべ、相手は惚れているものだと思い込んでいる自惚れた顔。

ただただ、気持ち悪かった。

とにかく、今すぐ離してほしい。

そう願いながら、柱に捕まり、一歩も動こうとしませんでした。

道を通る人がじろじろ見ていく視線を感じて冷静になったのか、ようやく部長が手を放してくれました。

そして、私の顔を真っ直ぐ見て言いました。

「わかってるよな、誰にも言うなよ。どうなるかわかるよな?」

私はとにかく頷きました。

そして、「これで終わりやないから」と笑いながら去り際に言われ、心底怖くなりその日は殆ど眠ることができませんでした。

執拗に続いた、3ヶ月間のセクハラ

それから三日後、突然企画部長が和歌山の店舗にやってきました。

それも閉店間際に。

スタッフは驚き、企画部長に尋ねると「店長とこれからのことで打ち合わせがあるから」と言って、先に帰るようスタッフに指示を出しました。 

また、二人きりで食事・・・気が重い中、「もしかしたら本社から何か極秘企画があるのかも」と思い直し、一緒に食事に行きました。

ところが仕事の話はまったくなく「会いたかった。忘れられない。惚れたかもしれない」と言ってくるのです。

「全部、嘘だ」とすぐに感づいたので、「婚約者をたいせつにしてください」と言って、「誰にも言いませんから、もう止めてください」とお願いをして、その場を立ち去りました。

これで終わると思ったのもつかの間、突然店の営業時間にやってきたり、就業間際に来ては食事に誘うようになりました。

二度目以降、食事に応じなくなったら、今度は店のストックルーム、試着室、レジの陰などでキスを迫られたり、体を触られたり・・・お客様が少ない閑散時間やシフトを確認して、私が一人の時にやってくるようになりました。

36歳のスタッフは「店長、大丈夫ですか?最近、しんどそうですよ」と心配して声をかけてくれました。

「言ってもいいかな、この人なら分かってくれるかな」とも思ったのですが、もし言ったら、もし大事になったら、もし本社の人に知られたら、何を言われることになるだろう。

「大丈夫ですよ」とだけ言い、ひた隠しに隠し続けました。

とにかく我慢、我慢、我慢をし続け三ヵ月位経った頃、企画部長が退職したと社内報で知りました。

こうして、壮絶なセクハラは終わったのでした。

社会人をスタートしての一年は、本当に理不尽な出来事の連続でした。

なぜ、誰にも言えないのか? その気持ちがわかるからこそのいま

なぜ、人に話さなかったのか、人事に相談しなかったのか?と思われることでしょう。

何度も上司に相談しようと思いました。

しかし、人気のある部長だっただけに、信じてもらえるかどうか不安でしょうがなかったのです。

もしも、「あなたの思い過ごしやろ?」と言われたらどうしよう。

母に相談したら、何と答えられるだろう。

きっと母のことだから、「あなたがふしだらだからだ」と言うか「そんな会社に就職するから」と責めるに違いない。

誰に話しても、親身に相談に乗ってもらえる気がしませんでした。

1990年。

今から27年前のことですから。

セクハラと言う言葉も知りませんでしたし、男女は違って当たりまえの社会の中でした。

だから、私は声を挙げることを一切やめて、ただただ黙って時間が過ぎることを待っていました。

実は、ほんの数年前まで、このことは誰にも話したことがありませんでした。

ずっと心の奥底にしまっておいて、「なかったこと」にしていました。

「ハラスメントを防止するための研修」に、講師として登壇するようになったから、話すようになりました。

私はどんなテーマの研修でも、「実例」「実体験」を伝えるようにしています。

テキストを読んで終わりの研修に意味はないからです。

だから、心の奥底に「自分の恥」として隠し通してきた体験を話すようになりました。

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