2022年、ハラスメントニュースのまとめ

こんにちは、ハラスメント対策専門家の山藤祐子です。

ここでは、2022年のハラスメントにまつわるニュースとともに、1年間の私の活動についても振り返ります。

まとめてみると、いろいろなニュースがありました。

すべてを掲載することはできませんので、私の独断で抜き出しています。

では、どうぞご覧ください。

2022年1月

ニュース

  1. 市区町村で、カスハラの相談体制をとりはじめる

カスハラとは「カスタマーハラスメント(顧客からの度を越えたいじめ嫌がらせ)」のことです。

カスハラ対策は、働く人々を保護する観点から、事業主への対策の必要性が問われています。

全国で相談体制ができることはとても大切なことですね。

2022年2月

ニュース

  1. 厚労省がカスハラ対策のマニュアルを作成し公表
  2. 介護業界のセクハラ、パワハラの実態について多数報じられる

とくに印象深いのは、介護業界の記事です。

記事の中には、入浴介助で陰部を「触って」など、聞くに堪えない行為があり、このまま放置すると介護職に就く人がいなくなると思います。

心から無くなってほしいし、従業員の方々を守ってほしいですね。

「お客様は神様」ではありませんから、何でも言うこと聞いて我慢していたら、働く人の心は蝕まれます。

サービス内容にかかわらず「おもてなし」を求めることそのものが、おかしなことではないでしょうか。

【山藤祐子の活動】

  • 【ライフ・ワーク・バランスEXPO東京2022】のミニセミナーに登壇。リモハラ・リクハラについて。

2022年3月

ニュース

  1. 東京都教育委員会が、教え子と性行為をしたなどの理由で、教員4人の懲戒免職を公表

このニュースを取り上げた記事の中には「教え子と性行為をした女性教諭など4人を懲戒免職」と題したものがありました。

実際は、4人のうち男性3人、女性が1人なのに、人数が少ない「女性教諭など」と報じるところに、女性蔑視があるように感じ違和感を覚えます。

印象操作にもなりかねませんので、ニュースは正しく報道してほしいと思います。

【山藤祐子の活動】

2022年4月

ニュース

  1. 中小企業に対する職場のパワーハラスメント防止措置が義務化
  2. 厚労省が、就活セクハラ防止を企業に対する指導強化すると公表

2022年5月

ニュース

  1. 長崎市に1900万円賠償命令 女性記者への性暴力―地裁
  2. 厚生労働省は、精神障害に関する労災認定請求の大幅増加を受けて、認定基準の見直しに向けた検討を進行
    • 心理的負荷につながる「対人関係」に関する具体的出来事として、カスタマーハラスメントを追加する案を提示
    • その内容として、「顧客や取引先、施設利用者等から(著しい)迷惑行為を受けた」を盛り込むと発表

長崎市の男性幹部(故人)から2007年、取材中に性暴力を受けたとして、報道機関の女性記者が市に約7400万円の損害賠償などを求めた訴訟です。

長崎地裁は、長崎市に対し約1975万円の支払いを命じました。

これは大きな裁判だなと思いました。

でも、何があっても女性記者の心の傷は癒えないし、なかったことにはならないと思います。

女性記者の方が、平穏な日々を送っておられることを、心から祈ります。

【山藤祐子の活動】

2022年6月

ニュース

  1. フリーランス女性へセクハラをしたことに対して、発注会社に慰謝料命じる判例が発表
  2. 東北地区のハウスメーカー「大した成績を残さず、あーあって感じ」と表彰し、青森の会社員が自殺したことをうけ、遺族が会社をパワハラで提訴

まず、1つ目のニュース。これは朗報でした。

フリーランスで働く女性が、発注会社の代表取締役からセクシュアルハラスメントを受けたと訴えた裁判です。

東京地方裁判所は発注会社と代表取締役に慰謝料など計188万円の支払いを命じました。

フリーランスの方々は雇用関係がないため、ハラスメントを受けやすい位置づけにあります。

こういう判例が出ることが、請負者に対してのパワハラ・セクハラの抑制につながると思います。

次に2つ目です。

これは、非常に痛ましい事件でした。

この訴訟は、遺族と和解が成立しています。

和解条項には

  • 謝罪文と合意内容を会社のホームページに掲載する
  • 今後3年間に年1回、全ての役員、従業員で今回の自殺を考える集会を開く

などが盛り込まれました。

会社員の方は、どんな思いで日々仕事に行っていたのだろうと想像するだけで、胸が苦しくなります。

【山藤祐子の活動】

2022年7月

ニュース

  1. 伊藤詩織さん訴訟、「同意ない性行為」を認め賠償確定し332万円の賠償命令。一方で、伊藤さんには山口敬之さんへの名誉毀損最の一部を認め55万の支払いを命じる

この判決の意義するところは、結果として大きいと思います。

私の周囲でも、訴訟内容については、意見が割れていました。

私が考える、意見が割れることに導かれた一つの要因は「ポリアモリー」(関与するすべてのパートナーの同意を得て、同時期に複数のパートナーと親密な関係をもつこと、または持つことを願うこと)の取材動画にあると思います。

この取材によって、伊藤さん自身が誰でも関係を持つ人と誤解をされたのではないかと、私は思いました。

ただ、動画を観ると、伊藤さんは「いろんな性的志向を受け入れることの大切さ」を伝えていたのですが。

たとえ、フリーセックス(性から解放されること)を望んでいる人がいても、誰とでも関係を持ちたいわけではないわけですし、仮にセクシーな服装を着ていることが、性的関係の同意を意味するわけではありません。

思い込みは怖いなあとしみじみ思います。

【山藤祐子の活動】

  • TOKYO MX「堀潤モーニングFLAG」にて、弊社調査「職場の謎ルール」が紹介、弊社代表山藤がコメント出演

2022年9月

ニュース

  1. 防衛省は、元陸上自衛官の女性に対して複数の隊員が日常的なセクハラ行為をしていたことを認め、謝罪
  2. 日本で働くウクライナ人女性が、在職中に受けた上司のパワハラ言動を提訴
    • 「野良犬と一緒。挨拶できひん奴は一緒や」「ウクライナも悪い(ロシア侵攻について)」など、日常的に暴言を吐かれたとされる
  3. 「公務員がコンビニでソフトクリームを食べている」と東京都のある区役所に理不尽なクレームが入り、職員の訴えにSNSが大きく反応

9月はいろいろなハラスメントニュースがあり、辛い立場の方々の心の平穏を願わずにいられませんでした。

その中で公職に就く人々に対して、厳しい視線を向け、自身が問題だとみなせば役所に連絡をし、「おかしい!!」と言ってくる人たちがいることに異常性を感じてもいます。

【山藤祐子の活動】

  • 株式会社東レ経営研究所 経営センサー 2022年9月号 職場におけるパワーハラスメントの課題と対応策―パワーハラスメントの基礎知識:管理監督者が留意すべきポイント 執筆

2022年10月

ニュース

  1. 厚生労働省、産後パパ育休(出生時育児休業)を施行
  2. 任天堂が、同社の「修理サービス規定/保証規定」に「カスタマーハラスメントについて」という項目を追加
  3. 警察官が上司にパワハラ。上司だけ隔離した座席表、アクリル板に目隠しなど、繰り返し行ったことで、訓戒処分を発表
  4. 行為者と会社に賠償命命令。中途入社の女性社員に対して、セクハラ・パワハラがあったと認定

2つ目の任天堂について。

同社の規定によると、消費者側から問い合わせの際に、脅迫や侮辱などがあった場合は修理を断ることがあるとしています。

さすがだな~と感じたニュースでした。

お客様だからといって、カスタマーセンターの方に、何を言ってもいいわけではありませんから。

従業員を守るのは企業の務めです。

従業員の心身の健康を守るためにも、必要な規定だと思います。

3つ目のニュースの警察官…

「上司の働きぶりに不満があった。大人げない対応をしてしまい反省している」というコメントも発表されましたが、ほんと大人げないですね。

パワハラとは、上司から部下だけではなく、部下から上司へもパワハラに当たることは、誰もが知っておかなければなりません。

最後のニュースについてです。

女性社員は、日常的に理不尽な叱責を受けたうえに、飲み会の席で別部署の男性に3度にわたり抱きつかれたとのこと。

そのことを上司に相談したところ、対応をされず放置されていました。

女性社員はうつ病と診断され休職を余儀なくされたようです。

裁判では、上司個人とセクハラ加害者個人、そして会社の三者を被告として損害賠償請求と休職中の賃金請求をしました。

管理職や指導に当たる社員にハラスメントの知識がないと、問題が大きくなる見本のような事件だと思います。

「まさか、こんなことで」と思っているとしたら、あまりにも認識が甘すぎると言えるでしょう。

企業規模の大小にかかわらず、ハラスメントについて正しい知識を継続的に学ぶことが企業を、そして従業員を守ることにもつながります。

2022年11月

【山藤祐子の活動】

2022年12月

ニュース

  1. 「女子は基本的に採用」と発言したとされる某大学教授に諭旨解雇処分
  2. Peach機内、マスク拒否男性に有罪判決
  3. 任天堂がSNSでゲーム購入者に「オンラインプレイで遊ぶときは、一緒に遊ぶ相手への思いやりの気持ちを忘れないようご協力をお願いいたします」と呼びかけ。ゲーム交流におけるさまざまなハラスメント行為をリスト化。

1つ目のニュースから。

大学側の発表では、調査委員会による調査の結果、当該教員による学生への不適切な対応は、「教授たる絶対的優位の地位にあるものの学生に対するハラスメント(パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、アカデミックハラスメント)言動、かつ本学の教授職にあるものの保つべき品位、品格、高潔さを甚だしく損なう」と説明。

よって、就業規則懲戒事由に該当すると発表しました。

この内容は、当該学生のSNSへの投稿を目にしましたが、何より許せないと思ったのは、その学生の名前を「そんな名前なんだから」と教授が発言していること。

一人の親として憤りを感じました。

つづいて2つ目、Peach機内での事件です。

大阪地裁は、Peach航空機内でマスク着用を拒否し、傷害や威力業務妨害などの罪に問われていた都内の元大学非常勤職員の男に対し、懲役2年、執行猶予4年の判決を言い渡しました。

男性は、格安航空会社、Peach Aviation の運行する機内で、新型コロナウイルス感染対策で要請していたマスクの着用を拒否し、客室乗務員にけがを負わせたほか、機体を臨時着陸させて運航を妨げたとされています。

男が機内で大声を上げるなどした行為が「航空法上の安全阻害行為」に当たるとして威力業務妨害罪の成立を認めました。

ルールはルールですからね。暴力はダメです。

最後のニュース。任天堂について。

またまた、素晴らしい対応だと思います!

「オンラインプレイで遊ぶときは、一緒に遊ぶ相手への思いやりの気持ちを忘れないようご協力をお願いいたします」

一緒に遊ぶ相手への思いやり。そのとおりですね。

いくらゲームといっても、オンライン上でプレイする画面の向こう側にいるのは「人」ですから。

一人ひとりが、配慮のある言動を心がけて欲しいと思います。

2022年でもっとも読まれた記事

2022年の1年間、当社に掲載している記事の中で、もっとも表示数が多かったのが、こちらです。

【部下との会話】「髪、切った?」はセクハラなのか?
https://diamond-c.co.jp/blog/e_2300.html

「髪、切った?」と言われた部下が調べているのか、「髪、切った?」と発言した上司が調べているのかは、わかりませんが

職場のハラスメントについて、何がセーフで、何がNGなのかが、はっきりしていないということなのだと思います。

よく言われるのが「パワハラだと感じたら、パワハラ」というものですが、決してそうではありません。

業務上の指導なのか、ハラスメントなのか、全社員がしっかり線引していく必要がありそうです。

2022年の研修・講演には、延べ1万人以上の方にご参加いただきました。

少しずつ、ハラスメントの正しい知識は行き渡っていると思いますが、ニュースを振り返る限り、まだまだですね。

ハラスメントのない世の中になることを目標に、ハラスメント対策専門家として、私にできることをやっていくだけです。

ハラスメント研修のご依頼がありましたら、ぜひご用命ください。

ハラスメント対策専門家
山藤 祐子

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ハラスメント防止の知識と行動

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投稿者プロフィール

山藤祐子
山藤祐子ハラスメント対策専門家
ハラスメント研修専門講師
国家資格キャリアコンサルタント

ハラスメントとは、あらゆる分野における「嫌がらせ」「迷惑行為」のことです。

企業においてハラスメントを防止するための研修を行っています。

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